2008年9月2日火曜日

2008年9月1日 電話取材

■先ほど、新潟県魚沼市銀山平の赤崩山・北ノ又川左岸の水源涵養保安林・ブナ広葉樹林の違法伐採について、自然保護の立場での意見として、新潟総合テレビNSTの報道部から電話取材を受けました。猛禽類の狩り場創出を名目として10m×30mの伐採地(ギャップ)を10カ所計画、2m×860m(実際には3.2m×610mまで尾根筋伐採)の作業道を1本、作ったもので水源涵養保安林の要件を逸脱し直径10cm以上の広葉樹(ブナ、ナラなど)147本の樹木を違法伐採、したものです。58名の地権者の全員の同意を得ていません。針葉樹のスギ人工林で狩り場創出ということが猛禽類を名目に行われてはいますが、それとは異なるもので、今回は、異例の事態で、水源涵養保安林の広葉樹林で悪用された事例です。新潟県では、大きな話題になっています(8月28日の毎日新聞新潟版、新潟日報、NSTテレビ既報)。

 一般的に現地を訪ねてわかるのは、ブナ林と、雪崩地帯・ガレ場、崩壊地など草地・岩場が広範囲に存在し、そこが狩り場になっているため、あらためて狩り場を創出するような意味を持たない地域である、ということ。また、高標高地・多雪地帯のブナ林に立木数本以上の穴を開けると、林床が乾燥し、ギャップそのものの林縁部が立ち枯れを起こしていく懸念がある。現地は岩石山に微量の土壌が乗ったきわめて不安定な土壌の上にあるブナ林で、かつ多雪地帯、なだれによる表土剥離が日常的に発生しやすい場所です。事前の環境調査を行わず、森林を破壊してからその経過を調査する、というきわめてずさんな計画となっていた。事業主体は新潟県魚沼市。許認可者は新潟県知事。現在、県知事が事業主の魚沼市長に対し伐採中止命令を出して、調査を行っている。魚沼市はこの事業に際して検討会を設置しているが、森林法および保安林制度、自然公園法、猛禽類の生態等に関する専門的知見を持たないまま、平成18年、19年、20年と事業を行ってきた。北ノ又地区、中の又地区の伐採事業等で2044万円の公費が支出されている。地権者全員の同意書を確認しないまま違法行為による申請を認可した県知事の瑕疵も問われる事態。法による行政が行われず、また伐採の原資は税金(公金)であり、財政支出上も違法行為の疑いがあり、新たな支出で今後の回復措置を自治体が公費で行うこと自体違法性の疑いがある。

 →→→日本自然保護協会

 →→→人工林での狩り場創出事例pdf3枚   →→→事例2 PDF5枚
 奥只見地域は、過去に日本政府の特殊法人・電源開発が自然公園法に違反して無許可で国定公園内にトンネルを掘削したり、コンクリを河川に不法投棄したりした違法行為が繰り返し行われてきたことで知られている。→→→イヌワシ保護1000日の記録(はる書房1998年)

 地方自治体が水源涵養保安林で地権者全員の同意を得ないで開発をする悪しき事例は会津高田町(現・美里町)の松坂ダム建設にともなう保安林解除や広域林道大滝線の開発に先立つ保安林解除でも、福島県知事が地権者同意を確認せずに保護林解除が行われた事実があります。珍しいことではなく、登記変更や分割登記などで地権者が増え、その同意を得られないときには、同意を得ないで、地権者代表だけの同意を、地権者全員の同意と読み替えて許可をする首長や県知事が出てきます。明確な悪意を持った違法行為です。→→→ブナの森とイヌワシの空(1995年)   →→→ブナの森とこの国の未来(歴史春秋社、2007年)


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■2008年8月28日 毎日新聞・新潟版より

 

魚沼市:国定公園で伐採 保安林、地権者が反発 /新潟
 イヌワシやクマタカが生息する魚沼市銀山平の越後三山只見国定公園内で、市が保安林を伐採したことに対し、地権者の一部から反発の声が上がっている。地権者全員の了承を得ていなかったためで、市は伐採法について非を認めたうえで改めて、その手法について検討する。

 伐採に反発しているのは、銀山平で土産物店を経営する中根真太郎さん(64)。「地権者に無断で伐採したのは問題だ」として27日、市の担当者に説明を求めた。

 伐採が行われた赤崩山(標高1162メートル)一帯では、ナラやミズナラが大きく成長し過ぎて猛きん類が餌を取りにくくなり、06年度から「里山エリア再生交付金事業」がスタート。下草を刈ったり、間伐して餌場を作っている。今月中旬、山の中腹に幅2~3・5メートルの作業用道路(約600メートル)を造ったことから山肌が露出し、問題になった。

 市は中根さんに対し「58人の地権者で作る組合の役員会の了承を取り付けたうえ、県の許可を得て実施した」と説明。中根さんは「私は何も聞いていない。これからは全地権者に事業内容を情報公開すべきだ」と要請した。

 今後について市は「専門家でつくる『森林整備検討会』の意見を聞きながら事業を進めたい」としている。【神田順二】

毎日新聞 2008年8月28日 地方版

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■新潟日報より

只見国定公園で誤って森林伐採

 魚沼市銀山平の越後三山只見国定公園内で、イヌワシなどの生息環境を確保する目的で同市が実施した森林整備事業で、予定より多くの保安林を伐採していたことが28日までに分かった。同市は「業者への説明不足だった。切りすぎた部分は回復も含めて県と相談したい」としている。

 同市農林課によると、切りすぎたのは赤崩山(1165メートル)の保安林。イヌワシやクマタカの巣が確認されているエリアで、同市は餌場の確保のため、2006年度から5年間の計画で間伐などをしている。

 今回は森林整備のため、主立った木を残して幅2メートル、長さ約600メートルの作業用道路を造る予定だった。しかし受注した業者が今月中旬、100―200メートルにわたり幅3メートル以上伐採し、残すべき主立った木も切った。

 保安林の伐採は県の許可がいるが、同市は今回の作業は許可が不要な軽微なものと判断し、届け出ていなかった。

 同課では「業者に伐採の範囲などを細かく指導していなかったのは、不十分な対応だった」と釈明。県魚沼地域振興局と協議し、伐採部分の回復方法を検討する。

新潟日報2008年8月28日